ダッジャール
ダッジャール · アル=マスィーフ・アッ=ダッジャール · Dajjal
イスラームの終末論において審判の日の前に現れ、メシアを装いのち神と称する敵対者。右目が潰れ、額に「不信仰」の文字が記されているが、これは信仰者にのみ見える。再臨したイーサー(イエス)に殺される。反キリストと同型。
解説
概要
アル=マスィーフ・アッ=ダッジャール(「欺くメシア」の意)、あるいは単にダッジャールは、イスラームの終末論における敵対者であり、約束されたメシアを装い、のちに神であると称して、審判の日の前に現れる。
イスラームの終末の物語において、十の大きな徴の一つとされる。
なお本サイトの分類では、アブラハムの体系に含めて扱う。
姿
クルアーンには現れず、ハディースに記される。
片目。 右目が潰れているとされる。あるいは、突き出た葡萄の実のようであるという。
額の文字。 額に「カーフ・ファー・ラー」(كفر、不信仰)の文字が記されている。
信仰者には読める。 文字が読めない者にも、信仰者であれば見えるという。
神は片目ではない。 「あなたがたの主は片目ではない」——預言者がそう告げたと伝えられる。
不完全さの徴。 神を装う者が、身体の欠損によって見破られる。
出現
四十日、あるいは四十年。 地上に留まる期間が記される。最初の一日は一年、次の一日は一月、次の一日は一週の長さであるという。
奇跡。 雨を降らせ、死者を蘇らせるように見せる。
イスファハーン。 イスファハーンから七万のユダヤ人を率いて現れるとする伝承がある。
注意。 この伝承は、反ユダヤ的な言説において引用されてきた。ハディースの記述と、その後代の政治的な利用は区別して扱われるべきである。
イーサーによる殺害
イーサー(イエス)の再臨。 ダマスカスの白い塔に降り立つ。
リッダの門。 イーサーがダッジャールを追い、リッダ(現在のロッド、イスラエル)の門で殺す。
塩が水に溶けるように。 イーサーを見ただけで、ダッジャールは溶けはじめるという。
イエスが戻る。 イスラームにおいてイーサーは殺されず天に上げられており、終末に戻って来る。
反キリストとの関係
同型。 キリスト教の反キリスト(アンティクリストス)と、明らかに対応する。
共通の起源。 いずれも第二神殿期のユダヤ教の終末論に遡るとみられる。
相違。 反キリストがサタンの子とされるのに対し、ダッジャールは人間である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ダッジャールを描いた図である。
関わる伝承
イーサーに殺される。反キリストと対応。
文化的足跡
ダッジャールの観念は、現代のイスラーム圏における終末論的な言説において、しばしば政治的に用いられてきた。
なおユダヤ教・キリスト教・イスラームは今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその伝承と観念の歴史に関する学術的な整理である。