チャク・チェル
チャク・チェル · 女神O · Chac Chel
創造と破壊・出産・水・機織り・治療を司る古いマヤの女神で、女神O。チャクあるいはイツァムナーの配偶とされる。ドレスデン絵文書の洪水の場面で壺を傾けて世界を滅ぼす。イシュ・チェルと長く混同されてきた。
解説
概要
チャク・チェルは、創造と破壊、出産、水、機織りと紡ぎ、治療、そして占いを司る強力で古いマヤの女神である。
原初の創造の対の一方であり、最も多くは雷と雨の卓越した神チャクの妻とみられるが、ときに創造神イツァムナーと対にされる。
男女、夫婦といった二元性はマヤにとってきわめて重要であり、一方は他方なしには機能しないとされた。チャク・チェルは「女神O」とも呼ばれる。
イシュ・チェルとの関係
チャク・チェルは、しばしばイシュ・チェルと混同される。
名が似ており(チェルは「虹」を意味するとされる)、いずれも老いた女神で出産と医術に関わるため、19世紀以来同一視されてきた。
今日の研究では、両者を区別する立場が有力である。チャク・チェルは絵文書の女神O、イシュ・チェルは月の女神と結びつけられる。ただし完全な区別は困難である。
洪水
ドレスデン絵文書の最終頁に、大洪水の場面が描かれる。天から水が注ぎ、羽毛ある蛇が水を吐き、その下で老いた女神が水を入れた壺を傾けている。
この女神がチャク・チェルである。世界を滅ぼす洪水を起こす者として描かれる。
創造と破壊を同じ女神が担う。産む力が、滅ぼす力でもある。
図像
老いた女性の姿で、爪を持ち、蛇を頭に巻き、骨の意匠をつける。豹の耳を持つことがある。
機織りの道具を持つ姿も描かれ、織ることと世界を作ることが重ねられている。
図像と象徴
固有の図像は存在するが、本サイトは主画像を掲げない。イシュ・チェルとの混同が続いてきたため、図像の同定に慎重を期す。
関わる神格・伝承
チャクの妻、あるいはイツァムナーの配偶。女神O。イシュ・チェルと区別される。
文化的足跡
ドレスデン絵文書の洪水の場面は、マヤの終末観を伝える最も知られた図像であり、2012年の「マヤ暦終末説」の流行に際して繰り返し引用された。ただしこの説自体に学術的な根拠はない。