カルメンタ
カルメンティス · ニーコストラテー · Carmenta
出産と予言の女神で、ラテン文字の発明者とされる。ヘルメースとのあいだにエウアンドロスを産み、アルカディアからパラティーヌスに移った。名は呪文・歌を意味するカルメンに由来。神殿には皮革の持ち込みが禁じられた。
解説
概要
古代ローマの宗教と神話において、カルメンタ(Carmenta、ラテン語カルメンティス)は出産と予言の女神であり、技術革新——とりわけラテン文字の発明あるいは翻案——と結びつけられ、母と子の保護者、産婆の守護神であった。
背景
名は一般にラテン語カルメン——呪文、神託、歌を意味し、英語の charm の語源でもある——に由来する。本来の名はニーコストラテー(「勝利の軍」)であったが、神託を与える名声を称えて改められた。ヘルメースとのあいだにエウアンドロスを産んだ母であり、息子とともにアルカディアからイタリアへ渡り、パラティーヌスの丘に定住した。
伝えによれば、カルメンタはギリシア文字の十五文字を改めてラテン文字を作ったという。文字の発明者としての性格は、予言を書き留める者という職能に対応する。
祭祀
1月11日と15日のカルメンターリアがその祭であり、女たちが祝った。神殿はカピトリーヌスの丘の麓、カルメンタ門の傍らにあった。
神殿では皮革製品の持ち込みが禁じられた。死を連想させるためである。出産の女神の神殿から、死に関わるものを排除するという禁忌である。
カルメンタは二つの相を持ち、ポッリマ(正常な出産)とポストウェルタ(逆子の出産)と呼ばれた。あるいは過去を見るポストウェルタと未来を見るアンテウェルタの対ともされ、予言の女神としての性格に対応する。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、アントワーヌ・デュフール『著名な女たちの生涯』(1504年)のニーコストラテー(カルメンタ)の図である。
予言と出産と文字という三つの職能の結びつきが、この女神を規定する。予言は言葉であり、文字は言葉を留め、出産は新しい生を生む。カルメン——呪文であり歌であり詩である——が、これらを一つに結んでいる。
関わる神格・伝承
子はエウアンドロス。ヘルメースに愛された。十五人の神官(フラーメン)を持つ神格の一つ。
文化的足跡
ボッカッチョ『名婦列伝』はカルメンタをラテン文字の発明者として讃え、ルネサンスの人文主義者はこれを繰り返した。