ピドライとタライとアルツァイ
ピドライ · タライ · アルツァイ
ウガリットの天候神バアルの三人の娘。ピドライは「光の娘」、タライは「雨の娘」で露と小雨を、アルツァイは「広き地の娘」で地下水あるいは冥界を司るとされる。いずれも定型句のみが伝わり役割は不明のままである。
解説
概要
ピドライ、タライ、アルツァイは、ウガリットの女神であり、いずれも天候神バアルの娘とみなされた。
三柱はしばしば併記され、『バアル神話』において「バアルの三人の娘」として現れる。
なお本サイトの分類では、フェニキア/ウガリットの体系に含めて扱う。伝承が乏しく、常に組で言及されるため群記事とする。
ピドライ
ピドライは、性格の定かでないウガリットの女神である。
「光の娘」。 「アル(光)の娘ピドライ」という定型で呼ばれる。
最初の証拠。 アモリの神格として、メソポタミアの二言語対照語彙表に最初に確認される。それ以外はほぼウガリットの文書に限られる。
役割は不明。 文書によく現れるにもかかわらず、ウガリット宗教におけるその役割は不明のままである。ウガリットの王の守護神の一柱であったとする説が提出されている。
名の解釈。 「ピドライ」の名は「脂肪」「霧」などと結びつけられてきたが、確定していない。
タライ
タライは、天候——とりわけ露と小雨——に結びつけられたウガリットの女神である。
「雨の娘」。 「ラブ(雨)の娘タライ」と呼ばれる。
乏しい記録。 知られるウガリットの文書にわずかしか確認されず、供物の一覧には現れない。それにもかかわらず、実際に崇拝されていたと想定される。
露。 「タル」(露)と同語根である。乾燥地において、露は貴重な水である。
アルツァイ
アルツァイは、後期青銅器時代のウガリットの都市で崇拝された女神である。
「地下水の娘」。 「ヤアブドル(広き地)の娘アルツァイ」と呼ばれる。
冥界か地下水か。 ウガリットの万神殿における位置と役割は不明のままである。冥界、あるいは地下水と結びつけられたとする説が提出されているが、いずれも一般の支持を得ていない。
名。 「アルツ」(大地)と同語根である。
三つの水
三柱は、いずれも水に関わるとみられる。
雨、露、地下水。 バアルが天からの雨をもたらすのに対し、その娘たちは水の異なる形を担う。
ただしこれは推定であり、資料が確証を与えるわけではない。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
名だけが伝わる神。 ウガリットの文書は豊富だが、そこに現れる神々の多くは名と定型句のみが知られる。神名が多数残りながら神話が乏しいという状態が、ウガリット宗教の研究を難しくしている。
関わる神格・伝承
バアルの娘。『バアル神話』に現れる。
文化的足跡
日本語圏でこれらの名が挙げられることはまずない。ウガリット文学の研究において言及される。