アンドラステ
アンドラステ · アンドラスタ · アンダテ
ボウディカがローマへの反乱に際して祈ったイケニ族の戦の女神。名は「征服されえぬ」を意味する。兎を放つ占いが伝えられる。唯一の資料はローマの歴史家カッシウス・ディオの記録であり、碑文には現れない。
解説
概要
アンドラステ(Andraste、アンドラスタとも)は、ローマの歴史家カッシウス・ディオによれば、西暦60年のローマによるブリテン占領に対する戦いにおいてボウディカが呼び求めたイケニ族の戦の女神である。
同じ資料が後に言及するアンダテと同じかもしれず、「彼らの勝利の名」——すなわち女神ウィクトーリアと記される。アンダルタと関係するかもしれないとセイヤーは主張する。
その名は「破壊されえぬ」あるいは「征服されえぬ」を意味すると訳される。
記述
カッシウス・ディオ『ローマ史』第62巻によれば、ボウディカは軍を集めたとき、懐から兎を放って占いを行い、アンドラステに祈った。兎が吉兆の方向へ走ったのを見て、軍は歓声を上げたという。
ボウディカの祈りは、ディオによれば次のような内容である。「アンドラステよ、私はあなたに感謝する。……女として女に呼びかける。……ブリテンの女王として、勝利と自由と生命を求める」
ボウディカの軍がロンディニウムなどを陥れたとき、捕らえたローマの女たちがアンドラステの聖なる森で残虐に殺されたと、ディオは記す。ただしこの記述は、敵を野蛮と描くローマ側の叙述である点に注意が要る。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
唯一の資料がローマ側の記録であるという点が、この女神を規定する。イケニ族自身の記録はなく、碑文にもこの名は現れない。ディオの記述が正確にブリトン人の信仰を伝えているかは確認できない。
多くのネオペイガンの資料は、兎をアンドラステに聖なるものと記す。この考えは、ボウディカが兎を放って占ったというディオの一節から敷衍されたものとみられる。
関わる神格・伝承
ボウディカが祈った。ウィクトーリアと同一視される。アンダルタ(ガリアの女神)との関係が論じられる。
ブリガンティア、ベリサマなど、ブリテンの土着の女神の一群に属する。
文化的足跡
ボウディカの反乱は、19世紀以降のイギリスにおいて愛国的な主題として繰り返し扱われ、アンドラステもこの文脈で言及される。ネオペイガニズムにおいても、独立の女神として再解釈されている。