アンダカ
アンダカ · アンダカースラ · Andhaka
パールヴァティーがシヴァの目を塞いだときの闇から生まれた盲目の子。「母に欲情したときにのみ死ぬ」という恩寵を得たが、自らの母と知らずパールヴァティーを奪おうとしてシヴァの三叉戟に貫かれた。のちに赦されて眷属の長となる。
解説
概要
アンダカ(Andhaka)は、インド神話のシヴァとパールヴァティーの三番目の息子である。名は「盲目の者」を意味する。
誕生
シヴァが苦行に明け暮れているためパールヴァティーが退屈しのぎにシヴァの目を塞ぐと、闇が世界を覆った。このときシヴァの額に第三の眼が生じた。その暗黒の闇から恐ろしい盲目の子が生まれた。この子は「盲目の者」を意味するアンダカと名づけられた。
その頃、アスラ神族であるヒラニヤークシャは息子が生まれることを祈って苦行していた。そこにシヴァが現れ、アンダカを里子として預けた。その際に、もしアンダカが世間の憎悪を受けたり、母を求めたり、バラモンを殺したときには、自身で焼き殺すことを告げた。
神話・物語
アンダカは成長してヒラニヤークシャの国の王となった。即位した直後、いとこが自分を倒そうと企てていることを知り、森へ逃れて瞑想を始めた。断食し、片足で百万年以上立ち続け、自らの体の一部を切ってブラフマーへの供物とした。
するとブラフマーが現れ、恩寵を与えた。アンダカは不死を求めたが拒まれたため、「母に欲情したときにのみ死ぬ」という条件を求め、認められた。視力も回復した。
三界を征服したアンダカは、カイラーサ山でパールヴァティーを見て欲情し、これを奪おうとした。それが自らの母であるとは知らなかった。シヴァは三叉戟でアンダカを貫き、数千年のあいだ突き刺したまま掲げた。血が地に落ちるたびに新しいアンダカが生まれたため、シヴァはこれを焼き尽くした。
ついにアンダカは罪を悟り、シヴァを讃えた。シヴァはこれを赦し、自らの眷属(ガナ)の長ブリンギとした。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、シヴァがアンダカを討つ図である。
条件つきの不死という恩寵が、そのまま滅びの条件になるという構造が、この物語を規定する。「母に欲情したときにのみ死ぬ」という条件は、自らが誰の子か知らないアンダカにとって安全に見えた。しかし条件を定めたこと自体が、その成就を予告している。
三叉戟に貫かれたまま数千年掲げられるという場面は、南インドの彫刻に繰り返し表された。エローラ石窟のアンダカーサンハーラ・ムールティ(アンダカを殺すシヴァ)が名高い。
関わる神格・伝承
父はシヴァ、母はパールヴァティー、養父はヒラニヤークシャ。討たれたのちシヴァの眷属の長ブリンギとなった。
文化的足跡
エローラ、エレファンタの石窟寺院におけるアンダカーサンハーラ・ムールティの彫刻は、インド美術における激しい動きの表現の代表作とされる。
なおヒンドゥー教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。