アラ
アラ · アニ · アナ
イグボの大地の女神で万神殿の最高のアルシ。冥界を統べ祖先を胎に抱く。道徳律は「オメンアラ(大地の掟)」と呼ばれ、罪は神ではなく大地に対して犯される。捧げられる泥像の建築ムバリは、完成後は朽ちるにまかせる。
解説
概要
アラ(イグボの方言によりアニ、アナ、アレ、アリとも)は、オディナニにおける大地、道徳、豊穣、創造性の女性のアルシ(神格)である。
オディナニにおいて、アラは冥界を統べ、亡くなった祖先をその胎に抱く。その名はイグボ語で文字どおり「大地」を意味し、大地に対する力と、地面そのものであるという位置を表す。
アラはイグボの万神殿において最高のアルシとみなされる。
道徳の女神として、アラは人の行いを裁くことに関わる。
なお本サイトの分類では、アフリカの体系に含めて扱う。
オメンアラ
イグボの道徳律は「オメンアラ」——「大地の掟」——と呼ばれる。
アラに反する行為は「ンソ・アラ」(大地への冒涜)とされ、最も重い罪である。殺人、近親相姦、盗み、双子の出産、雷死などがこれにあたる。
罪を犯した者は追放され、その土地は浄めの儀礼を要した。
道徳が大地に属するという観念が、この女神を規定する。罪は神に対してではなく、大地に対して犯される。
双子
かつてイグボの一部地域では、双子の出産がンソ・アラとされ、双子は捨てられた。
19世紀末、スコットランドの宣教師メアリー・スレッサーがこの慣行の廃止に努めたことが知られる。今日、この慣行は行われていない。
ムバリ
アラに捧げられる建築が「ムバリ」である。神託によって選ばれた人々が数年をかけて建て、内部に色鮮やかな泥の像を並べる。
中央にアラが子を抱いて坐し、周囲に神々、動物、そして日常の人物——役人、宣教師、自転車に乗る人まで——が配される。
完成すると放置され、朽ちるにまかせる。作ることが奉献であり、保存は目的ではない。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。ムバリの泥像が主要な表現である。
関わる神格・伝承
文化的足跡
ムバリの建築は、20世紀のアフリカ美術研究において重要な主題である。作って朽ちさせるという性格が、西洋の美術の保存の観念と対照をなす。
なおこれらの宗教は今日も信仰されている生きた伝統であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。