アラ
アラ · アニ · アナ
ナイジェリアのイグボの大地の女神で、最高のアルシ(神格)。冥界を統べ、祖先を胎に抱く。道徳律は「オメンアラ(大地の掟)」と呼ばれ、重い罪は大地への冒涜とされる。泥像を並べた建築ムバリが捧げられた。
解説
概要
アラ(イグボの方言によりアニ、アナ、アレ、アリとも)は、ナイジェリア南東部のイグボの伝統宗教オディナニにおける大地、道徳、豊穣、創造性の女性のアルシ(神格)である。
オディナニにおいて、アラは冥界を統べ、亡くなった祖先をその胎に抱く。その名はイグボ語で文字どおり「大地」を意味し、大地に対する力と、地面そのものであるという位置を表す。
アラはイグボの万神殿において最高のアルシとみなされる。
道徳の女神として、アラは人の行いを裁くことに関わる。
信仰
イグボの道徳律は「オメンアラ」——「大地の掟」——と呼ばれる。
アラに反する行為は「ンソ・アラ」(大地への冒涜)とされ、最も重い罪である。殺人、近親相姦、ヤムイモの盗み、かつては双子の出産などがこれにあたる。
罪を犯した者は追放され、その土地は浄めの儀礼を要した。
かつて一部の地域では、双子の誕生が大地への冒涜とされ、双子は捨てられた。この慣行は今日では行われていない。
図像と象徴
イグボのオウェリ地方では、アラに捧げる建築「ムバリ」が建てられた。神託によって選ばれた人々が数年をかけて建て、内部に色鮮やかな泥の像を並べる。
中央にアラが子を抱いて坐し、周囲に神々、動物、そして日常の人物——役人、宣教師、自転車に乗る人まで——が配される。
完成すると手入れされず、朽ちるにまかせる。建てる営みそのものが奉献であった。本サイトは主画像を掲げない。
系譜と関係
雷の神アマディオハと対をなし、その妻とされることもある。
文化的足跡
チヌア・アチェベの小説『崩れゆく絆』(1958年)では、大地の女神アニの「平和の週」に妻を打った主人公オコンクォが、女神への冒涜として償いを命じられる。ムバリについては、美術史家ハーバート・コールの研究『ムバリ』(1982年)がある。
なおこれらの宗教は今日も信仰されている生きた伝統であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。