上行菩薩
じょうぎょうぼさつ · ヴィシシュタチャーリトラ · 地涌の菩薩
法華経従地涌出品で大地から涌き出た地涌の菩薩の上首。釈迦から末法における法華経弘通を託された。日蓮宗では日蓮をその再誕とみなし、宗祖の位置づけを決める中核的な尊格。
解説
概要
上行菩薩(梵 Viśiṣṭacāritra)は、『法華経』従地涌出品第十五に登場する菩薩である。地涌の菩薩の上首四菩薩——上行・無辺行・浄行・安立行——の筆頭にあたる。
法華経における位置
従地涌出品において、釈迦が滅後の法華経の弘通を他方の菩薩たちに託そうとしたとき、大地が裂けて無数の菩薩が涌き出た。これが地涌の菩薩である。彼らは釈迦が久遠の昔から教化してきた弟子たちであり、その上首が四菩薩である。
釈迦は、滅後の末法の世において法華経を弘める使命を、この地涌の菩薩に託した。如来神力品第二十一で、釈迦は上行菩薩をはじめとする地涌の菩薩に法華経を付嘱する。
日蓮宗における解釈
日蓮宗・法華宗では、日蓮を上行菩薩の再誕とみなす。末法の世に法華経を弘める使命を託された上行菩薩が、日蓮として生まれたという解釈である。日蓮自身も、自らを上行菩薩の使いと位置づける記述を残している。
日蓮宗の本尊である大曼荼羅には、四菩薩の名が釈迦・多宝の両側に記される。
図像と象徴
固有の図像は乏しく、本サイトも主画像を掲げない。
日蓮宗の寺院では、釈迦・多宝の二仏の脇に四菩薩を配する「一塔両尊四菩薩」の形式で祀られる。
「上行」の名は、四菩薩の名がそれぞれ常楽我浄の四徳に対応するとする解釈がある。上行は「我」に配される。
地から涌き出るという出現の仕方が、この菩薩を規定する。他方の世界から来るのではなく、この娑婆世界の大地から現れる。末法の世に法を弘めるのは、この世界に根ざした者であるという含意がある。
関わる神格・伝承
地涌の菩薩の上首。無辺行・浄行・安立行と四菩薩をなす。
日蓮宗においては、日蓮の本地とされる。
文化的足跡
日蓮宗の教義において、上行菩薩は宗祖の位置づけを決める中核的な尊格である。日蓮の「上行再誕」という自己認識が、宗派の成立を支えている。
なお仏教は今日も信仰されている生きた宗教であり、本項の記述はその尊格の伝承と図像に関する学術的な整理である。