トゥピラク
トゥピラク · トゥピラック · Tupilaq
イヌイトのシャーマンが動物の骨や皮、時に死体の一部から作り、詠唱で命を与えて敵に放つ復讐の怪物。標的がより強ければ跳ね返されて作り手を殺す。実物は現存せず、今日の彫刻はヨーロッパ人の問いに応じて形を得たものである。
解説
概要
トゥピラク(トゥピラク、複数形トゥピライト)は、怪物、あるいは怪物の彫刻である。
イヌイトの宗教において、とりわけグリーンランドにおいて、トゥピラクはアンガコック(呪術あるいはシャーマニズムの実践者)が、動物の部分(骨、皮、毛、腱など)、さらには子供の死体から取った部分といったさまざまな物を用いて作り出した、復讐の怪物であった。
この生き物は儀礼の詠唱によって命を与えられた。
なお本サイトの分類では、北米先住民の体系に含めて扱う。
作り方と用い方
トゥピラクは、動物の骨や皮、毛、腱、ときには人の遺体の一部を縫い合わせたり束ねたりして形作られる。作り手は人目を避けた場所で、詠唱によってこれに命を吹き込む。作り手が自らの体を用いて力を与えるという記述もある。できあがったトゥピラクは海に放たれ、狙う相手のもとへ送られる。相手が舟で海に出たとき、トゥピラクはこれを襲って殺すのである。
跳ね返り
狙った相手がより強いシャーマンであった場合、トゥピラクは跳ね返される。送り返されたトゥピラクは、作り手自身を襲って殺す。これを防ぐ唯一の方法は、自らの行いを人々の前で告白することであった。呪術が失敗すれば術を行った者が死ぬという構造は、各地の呪術の考えに共通している。
彫刻としてのトゥピラク
今日、「トゥピラク」の語は、グリーンランドの木や骨の彫刻を指している。本来のトゥピラクは人目を避けて作られ、用いられたのちに捨てられたため、古い実物は残っていない。19世紀の後半以降、ヨーロッパの人々が「トゥピラクとはどのようなものか」と尋ねたため、イヌイトの人々はその姿を彫って示した。それが土産物として売られるようになり、グリーンランドを代表する工芸となった。見えないはずのものが、外から向けられた問いによって、形を得たのである。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、トゥピラクの彫刻である。
歪んだ顔、複数の頭、人と獣の混じった形——グロテスクな造形が特徴である。
関わる伝承
アンガコック(シャーマン)が作る。トルナクと対をなす(助力霊と攻撃の道具)。
文化的足跡
グリーンランドのトゥピラク彫刻は、今日も土産物として広く作られている。
なお北米先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。物語のうちには氏族や個人の所有物として扱われるものがあり、公開の場で語ることが適切でない場合がある。