トゥヌパ
トゥヌパ · Tunupa
ボリビアの休火山とその神。ティワナク文化に遡る古い神格でビラコチャと同一視され、杖を持ち貧しい姿で歩いて教えを説いた。アイマラの伝承では女神とされ、子を奪われて流した乳と涙がウユニ塩湖になったという。
解説
概要
トゥヌパは、南米ボリビア南西部のアイマラとケチュアの人々の伝承に語られる神で、ウユニ塩湖の北に立つ同じ名の火山と結びついている。杖を持ち、貧しい姿で各地を歩いて人々に教えを授けた神とされ、創造の神ビラコチャと同じものともみなされる。一方、アイマラの伝承では、子を奪われた女性として語られ、その乳と涙が流れ広がってウユニ塩湖になったという。スペインの宣教師たちは、この神を、キリスト教を伝えに来た使徒の記憶と解釈した。
なお本サイトの分類では、インカ/アンデスの体系に含めて扱う。本項は、火山そのものではなく、これに結びつく神と伝承を扱う。
旅をする神
トゥヌパは、ティティカカ湖のほとりに紀元後500年から1000年頃に栄えたティワナクの文化にさかのぼる、古い神とされる。ビラコチャの別名、あるいはその一つの姿とする説もある。杖を持ち、貧しい姿で各地を歩いて人々に教えを授け、従わない者を罰して石に変えた。ティティカカ湖から現れて各地をめぐり、最後には去っていったという。雷や火山とも結びつけられている。
塩湖になった涙
アイマラの伝承では、トゥヌパは美しい女性として語られる。まわりの山々の男たちに求められたが、産んだ子を奪われ、悲しみのあまり乳と涙を流した。その乳と涙が流れ広がって、ウユニ塩湖になったという。世界最大の塩湖の成り立ちが、女性の涙として語られているのである。標高5,321メートルのトゥヌパ火山は、この塩湖の北に立っている。
使徒と重ねられた神
スペインの宣教師たちは、トゥヌパの伝承を布教に利用した。杖を持ち、貧しい姿で歩いて教えを説いた白い髭の男という描写を、使徒トマス、あるいはバルトロマイが南米を訪れた記憶だと解釈したのである。アンデスにはかつてキリスト教が伝えられていたが、それが忘れられてしまったのだという。この解釈は、征服と改宗を、失われた信仰を取り戻すことだとして正当化する働きを持った。今日の研究では、この同一視に根拠はないとされ、トゥヌパはアンデス固有の神と考えられている。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、トゥヌパ火山とウユニ塩湖である。
関わる神格・伝承
ビラコチャと同じものとされ、ウユニ塩湖の起源を語る。
文化的足跡
ウユニ塩湖は、今日のボリビアを代表する観光地であり、世界最大級のリチウムの埋蔵地でもある。
なおアンデスの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。