杖の神
スタッフ・ゴッド · 太陽の門の神 · Staff God
チャビンからティワナク・ワリまで二千年近くアンデス宗教美術の中心にあった正面向きの人型図像。両手に杖を持つ。神格か儀礼者かは確定しておらず、名は考古学上の便宜的呼称である。
解説
概要
杖の神(Staff God)は、「南アンデス図像系列」における宗教的な図像であり、ビザンティン美術の定型の姿勢に似た、標準化された姿勢である。正面を向いた人間あるいは人型の像が、両手にそれぞれ垂直の持物を持つ。
ティワナクの「太陽の門」の中央像、チャビン・デ・ワンタルのライモンディ石碑の像が、その代表的な作例である。
図像と解釈
「杖の神」の統一された表現は存在しない。数十の変種がある。一部の研究者は、これらの人物の一部がビラコチャ、あるいはトゥヌパ(アイマラの天候の神)を描いた可能性を考える。
しかし、これらの正面向きの人物が神格を表すという考えには、根拠が乏しい。持物と空間配置から、儀礼の実践者を示すとみる研究者もいる。手に持つ持物のいくつかは、ケロ(アンデスの儀礼用の杯)、嗅ぎ煙草の盆(儀礼の文脈で用いられる)、投槍器と同定された。ワリの遺跡コンチョパタで出土した器には、頭から生えた「光線」をアナデナンテラ・コルブリナの木——幻覚剤の原料——と解釈でき、円形の要素がその莢を表す杖の神が描かれている。
最古の作例は、ペルー北部の前2250年頃の瓢箪の破片に描かれたものとされ、アメリカ大陸で確認された最古の宗教的図像の一つに数えられる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ティワナクの太陽の門を描いた1960年のボリビアの切手である。
この図像の重要性は、その分布と持続にある。チャビン(前900年頃〜)からティワナク、ワリ(後500〜1000年頃)まで、二千年近くにわたってアンデスの宗教美術の中心にあり続けた。
しかし何を表すかは分からない。神なのか、祭司なのか、複数の異なる存在なのか。「杖の神」という名は考古学上の便宜的な呼称にすぎず、この名で呼ばれる存在をアンデスの人々がどう呼んでいたかは伝わらない。本項がこの図像を figure として立てるのは、既存記事から言及される受け皿としてであり、神格としての実在を前提とするものではない。
関わる神格・伝承
ビラコチャあるいはトゥヌパとの同定が提案されている。インティとの関係を説く説もある。
太陽の門の中央像は、両手に杖を持ち、頭から光線が放射し、涙のような線が頬を伝う。この「泣く神」の主題は、雨と結びつけて解釈されることが多い。
文化的足跡
太陽の門はボリビアの国章的な図像として、切手、紙幣、公共建築に繰り返し用いられている。ティワナクは2000年に世界遺産に登録された。
なおアンデスとアマゾンの先住民の伝統は今日も継承されている生きた信仰である。