レイヴン・モッカー
レイヴン・モッカー · カーラヌ・アキェリスキ · Raven Mocker
病者と死にゆく者の心臓を食って残された寿命を奪うチェロキーの魔女。夜に火の玉となって飛び、鴉の声を上げる。訓練を積んだ呪医だけが見ることができ、見られたレイヴン・モッカーは七日のうちに死ぬ。
解説
概要
レイヴン・モッカーは、北米のチェロキーの人々の伝承に語られる、病人や死にかけた人を狙う魔女、あるいは悪しき霊である。しなびた老人の姿で夜に火の玉となって飛び、鴉のような叫び声を上げる。死にかけた人の家に入り込んで心臓を取って食べ、その人に残されていた年月を自らの命に加えるという。訓練を積んだ呪医だけが、その姿を見ることができた。
なお本サイトの分類では、北米先住民の体系に含めて扱う。
命を奪って生き延びる
レイヴン・モッカーは、夜に火の玉となって飛び、腕を広げると火の帯が伸びるという。飛ぶときには鴉のような叫びを上げ、その声を聞くことは、近くで誰かが死ぬしるしとされた。死にかけた人の家に入ると、心臓を取り出して食べる。傷は残らず、外からは分からない。犠牲者に残されていた寿命は、レイヴン・モッカーの寿命に加えられる。多くの命を奪った者ほど、奪った年月の分だけ老いて見えるという。
見張る呪医
レイヴン・モッカーの姿を見ることができるのは、訓練を積んだ呪医だけである。死にかけた人のそばには呪医が坐り、レイヴン・モッカーを追い払った。レイヴン・モッカーは、正体を見られると七日のうちに死ぬとされる。
記録について
この伝承は、ジェイムズ・ムーニーの『チェロキーの神話』(1900年)に記録された。アメリカ民族学局のムーニーは、東部のチェロキーの人々のもとで長く調査を行い、多くの物語や呪文を書き留めた。チェロキーの伝承を知るための重要な資料である一方で、外部の者が聖なる知識を記録して公にしたことには批判もある。ムーニーが呪医から得て公刊した呪文は、本来、限られた人にだけ伝えられるものであった。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる伝承
チェロキーの人々の魔女の観念に属する。
文化的足跡
レイヴン・モッカーは、アメリカのホラー小説やテレビ番組にしばしば取り上げられる。
なお北米先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、物語が特定の氏族や個人に属する場合もある。本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。