ノンモ
ノンモ · ヌンモ · 水の主
マリのドゴン人の原初の祖先の霊で、両生の雌雄同体の魚に似た存在。創造神アンマが最初に創り、自らを犠牲にして世界を清め、その血が水となった。グリオールの記録の信頼性とシリウス伝説をめぐる議論がある。
解説
概要
ノンモ(ヌンモとも)は、マリのドゴン人によって崇敬される、ドゴンの宗教と宇宙生成論における原初の祖先の霊である(ときに半神と呼ばれる)。
ノンモという語は、「飲ませる」を意味するドゴンの語に由来する。
ノンモは通常、両生の、雌雄同体の、魚に似た存在として描かれる。民間の美術におけるノンモの描写は、人間のような上半身、脚と足、そして魚のような下半身と尾を持つ存在を示す。
ノンモはまた、「水の主」「監視者」「教師」とも呼ばれる。ノンモは個人の固有名でも、一群を指す語でもありうる。
なお本サイトの分類では、アフリカの体系に含めて扱う。
神話
創造神アンマが最初に創ったものがノンモである。
アンマは大地の女と交わろうとしたが、蟻塚に妨げられ、不完全な子——狐(ユルグ)——を生んだ。その後、正しい交わりによって双子のノンモが生まれた。
ノンモは、自らを犠牲にして世界を清めた。その血が水となり、身体が四方へ分けられて人類の祖となった。
グリオールの記述
フランスの民族学者マルセル・グリオールは、1930〜40年代にドゴンの調査を行い、その宇宙論を詳細に記録した。『青い狐』『水の神』がその成果である。
グリオールの記述は、ドゴンの宇宙論を体系的かつ精緻なものとして描いた。とりわけシリウスの伴星についての知識が記されていることが、後に大きな議論を呼んだ。
批判。 1990年代以降、ヴァルター・ファン・ベークをはじめとする研究者は、グリオールの記述をドゴン自身に確認できなかったと報告した。
グリオールが情報提供者との対話のなかで体系を構成した可能性、あるいは情報提供者がグリオールの期待に応えた可能性が指摘されている。
疑似科学。 ロバート・テンプル『シリウス・ミステリー』(1976年)は、ドゴンの天文知識を地球外生命の接触の証拠とした。この主張には学術的な根拠がなく、グリオールの記述の信頼性の問題を無視している。
本項は、ノンモをドゴンの伝承として扱い、これらの言説には立ち入らない。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、腕を上げたノンモ像である(ブルックリン美術館蔵)。
腕を高く上げた木彫が、ドゴンの美術の代表的な形式である。雨を乞う姿とされる。
関わる神格・伝承
アンマの子。狐(ユルグ)と対をなす。
文化的足跡
ドゴンの木彫と仮面は、20世紀のヨーロッパの美術に大きな影響を与えた。
なおこれらの宗教は今日も信仰されている生きた伝統であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。