ンガイ
ンガイ · エンカイ · Ngai
ケニアのギクユ人とマサイ人らの創造神。ケニア山(キリニャガ)に住むとされ、人はこの山に向かって祈り家の扉も山に向けた。マサイでは黒い神が雨を、赤い神が旱をもたらす。天から綱で牛を降ろしマサイに与えたという。
解説
概要
ンガイ(ムルング、エンカイとしても知られる)は、ケニアとタンザニアのギクユ人、および関連するエンブ、メル、カンバ、マサイの人々の伝統的な霊性における中心の神格である。
これらの信仰体系において、ンガイは宇宙とすべての存在するものの創造者と認められる。
伝統的な礼拝は、しばしばケニア山に向かって行われる。ケニア山は、これらの共同体にとって中心的な霊的意義を持つ場所である。
なお本サイトの分類では、アフリカの体系に含めて扱う。
ケニア山
ギクユの人々の言葉で、ケニア山は「キリニャガ」(輝く山)と呼ばれ、ンガイの住まいとされる。祈るときにはこの山に向かい、家を建てるときには、扉を山のほうへ向けた。ンガイは四つの山に住むともされる。北のキリニャガ(ケニア山)、南のキア・ンジャフ、東のキア・ンボルオニ、西のキア・ニャンドゥアである。ンガイは季節ごとに山を移り、その方角に応じて雨が降るという。
ギクユとムンビ
ギクユの人々の起源の物語によれば、ンガイは最初の男ギクユをキリニャガの頂に連れていき、土地を見せて与えた。そして、妻としてムンビを与えた。二人には九人の娘が生まれ、それぞれがギクユの九つの氏族の祖となった。実際には娘は十人いたが、九人と言うのが習わしである。数をぴったり言うことは不吉とされ、子どもや家畜の数を数えることも避けられたのである。
マサイのエンカイ
マサイの人々のあいだで、エンカイは二つの姿を持つ。「黒い神」エンカイ・ナロクは恵み深く、雨をもたらす。「赤い神」エンカイ・ナニョキエは怒って、日照りをもたらす。黒が恵みを、赤が災いを表しており、雨雲の黒と、乾季の赤い大地とに対応している。マサイの伝承によれば、エンカイは天から綱で牛を降ろし、マサイの人々に与えた。そのため、世界じゅうの牛はマサイの人々のものである、とされた。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる神格・伝承
ムルングと同じ語で呼ばれる。バントゥ諸族とナイル系のマサイが同じ神名を共有する。
文化的足跡
ケニア山は、今日もギクユの人々にとって聖なる山である。ケニアの国名もこの山に由来する。
なおこれらの宗教は今日も信仰されている生きた伝統であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。