ナナ・ブルク
ナナ・ブルクー · ナナン・ブークルー · ナナ・ブクー
フォン人とエウェ人の宗教ヴォドゥンにおける女性の至高創造神。月の霊マウと太陽の霊リサを産んだのち退き、世界をマウ=リサに委ねた。カンドンブレでは沼と泥の老女神。
解説
概要
ナナ・ブルク(ナナ・ブルクー、ナナン・ブークルーとも)は、西アフリカのフォン人(ベナン、ダホメ)とエウェ人(トーゴ)の伝統宗教における女性の至高存在である。
西アフリカの神学において最も影響力のある神格の一つで、フォン人以外の多くの民族にも共有される。ただし民族によって異なる形をとる。ヨルバ人はナナ・ブクー、イボ人はオリサブルワと呼び、積極的に祀る集団もあれば、この神から生じた神々を祀る集団もある。
神話・物語
ダホメの神話において、ナナ・ブルクは至高の母なる創造神であり、月の霊マウ、太陽の霊リサ、そして全宇宙を産んだ。これらを産んだのち退き、世界の事柄をマウ=リサに委ねた。
ナナ・ブルクが第一の創造者、マウ=リサが第二の創造者であり、これに基づく神学がヴォドゥン——ヴードゥーの名で知られる——である。
マヤ・デレンによれば、一部のヴォドゥンの信者はナナン・ブークルーを男女両性と考える。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
この神格を規定するのは、退いた創造者という位置である。宇宙を産んだのち、その運営を子に委ねて姿を隠す。「隠れた神」(デウス・オティオースス)の型であり、アフリカの諸宗教に広く見られる。至高神は遠く、日常の祈りは中間の神々に向けられる。
月と太陽を産んだ母であること、そして両性具有とされることは、対立するものの根源としての性格を示す。
関わる神格・伝承
子はマウ(月)とリサ(太陽)。マウ=リサは双子あるいは一体の両性神として、第二の創造を担う。
ブラジルのカンドンブレでは、ナナン・ブルクは沼と泥の女神として祀られ、老いた女の姿をとる。死と再生を司り、その象徴は箒(イベリ)である。
文化的足跡
ヴォドゥンは今日もベナンとトーゴで信仰され、ベナンでは1996年に公認宗教となった。1月10日はヴォドゥンの祝日である。
奴隷貿易を通じてハイチ、ブラジル、キューバに伝わり、それぞれの地でヴードゥー、カンドンブレ、サンテリーアの一部となった。
日本語圏では、ヴードゥーの紹介において至高神として名が挙げられることがある。なおヴォドゥンは今日も生きた宗教である。