ラック・ロン・クアンとアウ・コー
ラック・ロン・クアン · アウ・コー · 貉龍君
ベトナムの民族起源神話の二人。海の龍王の血を引くラック・ロン・クアンと山の仙女アウ・コーが結ばれ、百個の卵の袋から百人の子が生まれた。龍と仙女は相容れず、五十人ずつ海と山へ別れた。山へ向かった長子が最初の王朝の雄王となった。ベトナム語で国民を指す「同胞」はこの袋に由来するとされる。
解説
概要
ラック・ロン・クアン(貉龍君)とアウ・コー(嫗姫)は、ベトナムの人々の起源を語る神話の夫婦である。海の龍王の血を引くラック・ロン・クアンと、山に住む仙女アウ・コーが結ばれ、アウ・コーは百個の卵を包んだ袋を産み、そこから百人の子が生まれた。やがて二人は別れ、山へ向かった子の長子が、ベトナム最初の王朝の始祖、雄王(フン・ヴオン)になったとされる。
なお本サイトの分類では、東南アジアの神話の体系に含めて扱う。二人が常に組で語られるため群記事とする。
百の卵
ラック・ロン・クアンは、海の龍王の血を引く者であり、アウ・コーは山に住む仙女であった。龍と仙女が結ばれ、アウ・コーは百個の卵の入った袋を産み、その卵から百人の息子が生まれた。
しかし、水に属する龍と山に属する仙女は、性質が違いすぎてともに暮らすことができなかった。二人は別れることを決め、五十人の子は父とともに海へ、五十人は母とともに山へと向かった。困ったときには互いに呼び合い、助け合うことを約束したという。百人の子は、「百越」と呼ばれる諸民族の祖とされる。
雄王の始まり
母とともに山へ向かった子らの長子が王となり、ベトナム最初の王朝とされる鴻龐朝の始祖、雄王となった。雄王は十八代続いたと伝えられる。旧暦三月十日の「雄王の命日」は、2007年以降、ベトナムの国民の祝日になっている。
龍と仙女の子孫
ベトナムの人々は、自らを「龍の子、仙女の孫(コン・ロン・チャウ・ティエン)」と呼ぶことがある。また、国民を指す「同胞」(ドン・バオ、「同じ袋から生まれた者」)という語も、この百の卵の袋に由来するとされる。この神話は、ベトナムの民族としての自己理解の土台となっている。ただし、民族の起源として強く打ち出されるようになったのは、主に20世紀の民族主義の時代以降のことである。文献に現れるのは、15世紀の説話集『嶺南摭怪』に遡る。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ビン・ダーの内殿にある国祖ラック・ロン・クアンの浮彫である。
関わる伝承
雄王の父母とされる。ソン・ティンとトゥイ・ティンの物語は、この王統の時代の出来事として語られる。
文化的足跡
「同胞」の語は、今日のベトナムで国民全体を指す言葉として使われている。
なお東南アジアの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。