イシュハラ
イシュハラ · イシャラ · Ishara
エブラの王家の守護女神で、愛・婚姻・誓約・占いを司る。蠍を象徴とし、蠍座はこの女神の星座とされた。ヒッタイトの条約で誓約の証人として呼ばれ、シリアからメソポタミアまで広く受容された。
解説
概要
イシュハラ(Išḫara)は、前三千年紀に現在のシリア北部のエブラと近隣の集落で本来崇拝された女神である。その名の起源は議論があり、フルリ語あるいはセム語の語源を支持する証拠がないため、言語的な基層に起源を持つと推定されることがある。
エブラでは王家の守護女神とみなされた。彼女とこの都市との結びつきは、他の遺跡の後代の資料にも保存されている。
職能
愛と婚姻。 愛にも結びつけられ、その役割において東方のメソポタミアでも確認される。複数の資料が、婚姻の制度の女神とみなす。ただし呪文が示すように、性愛にも結びつけられた。
婚姻の女神として、契約の証人として呼ばれた。
誓約と占い。 誓約と占いにも結びつけられた。ヒッタイトの条約文書において、イシュハラは誓約の証人となる神々の一覧に含まれる。誓いを破る者を罰する神である。
蠍。 イシュハラの象徴は蠍である。天文学において蠍座はイシュハラの星座とされた。蠍の毒が誓いの違反者への罰と結びつけられたとみられる。
広がり
エブラからヒッタイト、フルリ、メソポタミアへと広く受容された。ヒッタイトの万神殿では重要な位置を占め、フルリの女神たちと同列に置かれた。
メソポタミアではイシュタルと結びつけられ、その添え名として用いられることもあった。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
蠍が、この女神の象徴である。境界石(クドゥル)に蠍が刻まれるとき、それはイシュハラを表す。
複数の文化圏を横断して受容された女神という点が、この神格を規定する。シリアの土着の女神が、ヒッタイト、フルリ、アッシリア、バビロニアの万神殿に組み込まれた。誓約の証人という職能が、国際条約において有用であったためとみられる。
関わる神格・伝承
エブラの王家の守護女神。イシュタルと結びつく。蠍座と結びつく。
文化的足跡
蠍座がイシュハラの星座とされたことは、バビロニアの天文文書に記録され、ギリシアの星座名に受け継がれた。