イベジ
イベジ · イビジ · タイウォ
ヨルバの双子のオリシャ。ヨルバは世界で最も双子の出生率が高く、双子は特別な力を持つとされる。後から生まれたケヒンデが年長とされ、先に世界を確かめさせるためタイウォを遣わしたという。一方が死ぬと木像が彫られ生者と同様に扱われる。
解説
概要
イベジ(イビジとも)は、ヨルバの宗教における双子のオリシャである。名はヨルバ語で「二人生まれ」を意味する。
ヨルバ人は世界で最も双子の出生率が高い民族の一つであり、双子は特別な霊的な力を持つとされる。
なお本サイトの分類では、アフリカの体系に含めて扱う。
双子への信仰
双子の兄(あるいは姉)はタイウォ、弟(妹)はケヒンデと名づけられる。
タイウォは「世界を味わう者」を意味し、ケヒンデは「後から来る者」を意味する。
ただしヨルバの理解では、後から生まれたケヒンデのほうが年長である。ケヒンデが先にタイウォを遣わして世界を確かめさせ、安全と分かってから自ら出てくるためである。
出生の順序と年齢の順序が逆転するという観念である。
エレ・イベジ
双子の一方が死ぬと、その子を象った小さな木像「エレ・イベジ」が彫られる。
母はこの像を、生きている子と同じように扱う。洗い、衣を着せ、食物を供え、抱いて眠る。市場へ行くときも連れて行く。
死んだ子の霊が生きている子を害さないよう、また双子の均衡が失われないようにするためである。
像は摩耗し、顔が磨り減るまで扱われる。信仰の痕跡が像に刻まれる点は、日本の撫で仏と共通する。
起源譚
伝承によれば、かつて双子は不吉とされ、森に捨てられた。
しかしある王が双子を得て育てたところ、その国は栄えた。以後、双子は幸をもたらすものとされるようになったという。
イグボのアラの信仰において双子が禁忌とされたのと対照的である。近接する民族が、同じ現象に正反対の評価を与えている。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、イベジ像である。
一対の小さな木像として彫られる。同じ姿で、性別によって区別される。
関わる神格・伝承
シャンゴの子とされることがある。
文化的足跡
エレ・イベジは、アフリカ美術のなかで最も多く作られた木彫の形式である。数万体が現存し、世界の博物館とコレクションに収蔵されている。
なおこれらの宗教は今日も信仰されている生きた伝統であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。