クルラホーン
クルーラホーン · クロリコーン · クルリカーン
アイルランドの民間伝承に語られる大酒好きの妖精。醸造所や葡萄酒蔵に居着き、飲み尽くし、悪戯をする。レプラコーンと同一視されることも多い。
解説
概要
クルラホーン(Clurichaun、アイルランド語 clúrachán、clobhair-ceann)は、アイルランドの民間伝承に語られる妖精である。大酒好きで、醸造所、酒場、葡萄酒蔵に居着くことで知られる。
レプラコーンと近い関係にあり、靴職人であること、隠された宝の番人であることなど、しばしば同一視されてきた。このためクルラホーンは「酒に酔ったレプラコーン」にすぎないと見る民俗学者もいれば、同じ存在の地方差と考える者もいる。レプラコーンと同じく、群れをなさず一人で現れる「孤独な妖精」に属する。
登場する物語
トマス・クロフトン・クローカーが1825年に記録した民話「取り憑かれた酒蔵」は、この存在をよく伝える。ナッゲニーンという名のクルラホーンが、あるアイルランド貴族の葡萄酒蔵に居着き、目につくものを片端から飲み、召使いたちを怖がらせる悪戯を仕掛ける。
身の丈は六インチ(十五センチ)ほど、皺の寄った林檎のような顔。目はきらめき、鼻は深酒で赤紫になっている。赤い寝帽をかぶり、短い革の前掛けをつけ、水色の靴下に大きな銀の留め金のついた靴を履く。屋敷の主人に見つかったとき、彼は「引っ越すなら自分も一緒に行く」とほのめかして、主人に転居を思いとどまらせた。
この「引っ越しても付いてくる」という筋は、家の精をめぐる民話の定型である。トマス・カイトリーが『妖精神話』(1828年)に載せるリトル・ワイルドビーンの話も同じ型をとる。クエーカー教徒ハリス氏の酒蔵に居着いたこの妖精は、他の同類より役に立ち、召使いが不注意にビール樽の栓を開けたままにすると、自ら樽の口に身体をねじ込んで流出を止めた。ただし怒りは早い。ある夜、料理女が夕食に鰊の切れ端と冷えた馬鈴薯しか置かなかったとき、真夜中に彼女を寝床から引きずり出し、固い酒蔵の階段を引き摺り下ろした。女は三週間寝込んだという。
別の話「主人と下男」では、冬の夜道でクルラホーンに酒を勧められた若者ビリー・マク・ダニエルが、代金を払わなかったために七年と一日の奉公を強いられる。彼は最後に神の祝福を唱えることで縛めを解いた。この話のクルラホーンは、鍵穴を通り抜けて家や酒蔵に入り込み、湿地の藺草を馬に変えて乗り回す。魔女の箒のように藺草に乗って空を飛ぶこともできる。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ジョウゼフ・ジェイコブズ『ケルト妖精物語』(1892年)にジョン・D・バテンが寄せた挿絵である。ただし断りが要る。この挿絵が付されている話「ボリオーンの野」の主人公は、原文では「レプラコーン」と呼ばれている。にもかかわらずこの図がクルラホーンの図として用いられるのは、手にした酒壺のためである。
この事情自体が、この存在をめぐる問題を表している。酒壺を持つ小人はクルラホーンにも見え、靴を傍らに置く小人はレプラコーンにも見える。伝承の側が両者を区別しきっていない以上、図像の側でも区別はつかない。
民俗学者ニコラス・オキアニーは1855年にこう記した——クロヴァル・ケンは同類のもう一つの存在で、陽気で赤ら顔の酔っ払いの小男であり、放蕩者の酒蔵に必ず見つかる。バッコスさながらに酒樽にまたがり、なみなみと注いだ大杯を手に、飲んでは陽気に歌っている。この精が出るとされた酒蔵の持ち主は、たちまち破産する運命にあった。
キャサリン・ブリッグズは「酒好きの家の酒蔵で自ら宴を張り、あるいは葡萄酒を盗む不正直な召使いを脅す、一種の食料庫の精」と要約している。
関わる伝承
レプラコーンとの関係が、この存在をめぐる議論のすべてである。孤独な妖精という分類、赤い衣、隠された宝、そして靴——共有する属性は多い。分ける手がかりは酒だけである。
騒々しく、家の秩序を乱し、昼も夜も物音を立てる悪戯者でありながら、居着いた家の一族には特別に目をかけるという。害をなす精と守る精の境が、この存在においては引かれていない。
文化的足跡
日本語圏では、クルラホーンは「酒好きのレプラコーン」として紹介されることが多い。それはおおむね正しいが、19世紀の民俗学者たちが両者を別の存在として記録しようとしたことも事実である。
アイルランドの妖精伝承において、家に居着く精は追い出せない。転居しても付いてくる——この一点が、クルラホーンの話の核をなす。厄介者を厄介者として抱え込んで暮らすという構えが、この存在の物語には共通している。