チンディ
チンディ · チーディー · Chindi
人の死とともに残される瘴気で、その人の生において負であったすべてを含むナバホの観念。接触は病を招く。家のなかで死ねばその家を捨て、死者の名を口にしない。終末期医療において文化的配慮の必要な例として論じられる。
解説
概要
チンディは、アメリカ合衆国南西部に住むナバホの人々の信仰で、人が死んだあとに残されるとされる害をなすものである。死者の最後の息とともに体から離れ、その人が生きているあいだに抱えた痛みや恐れ、怒り、恨みといった、調和のなかへ還すことのできなかったものの名残であるという。チンディに触れると病になると考えられ、ナバホの人々は死にかかわるものを強く避けてきた。
なお本サイトの分類では、北米先住民の体系に含めて扱う。
死を避ける
ナバホの人々にとって、死は強く避けるべきものである。人が家のなかで死ぬと、その家にチンディが留まるとされた。そのため伝統的には、家(ホーガン)の北側の壁を破って遺体を運び出し、家を捨てるか焼いた。死が近づくと、家を失わないために、病人を外へ運び出すこともあった。チンディを呼び寄せないよう、亡くなった人の名を口にすることも避けられた。遺体に触れた人は、四日のあいだ清めの儀礼を行わなければならなかった。
調和としての健康
ナバホの人々の医療では、病は調和の乱れと考えられる。「ホジョー」は、調和、美しさ、健やかさ、秩序を意味する言葉で、ナバホの宗教の中心にある考えである。病を癒すため、歌い手(ハタァリー)が何日にもわたる儀礼を行い、砂絵を描き、歌をうたって、病人を調和のなかへと戻す。チンディに触れたことによる病は「幽霊の病」と呼ばれ、それに応じた儀礼によって癒される。
今日の医療との出会い
20世紀以降、病院で亡くなる人が増えたことは、ナバホの人々が死を避ける考えとぶつかることになった。また、言葉が現実を形づくるという考えから、ナバホの患者に病の見通しを告げることが悪い結果を招くと受け止められる場合もある。医療の倫理を考えるうえで、文化への配慮が必要な例として論じられてきた。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる伝承
スキンウォーカーと、死にかかわるものを避ける考えを分け持つ。
文化的足跡
ナバホの部族警察の警官を主人公にしたトニー・ヒラーマンの推理小説の連作を通じて、チンディの考えは広く知られるようになった。
なお北米先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、物語が特定の氏族や個人に属する場合もある。本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。