バタラ・カラ
バタラ・カラ · カーラ · Batara Kala
ジャワとバリの死と時の神で、名はサンスクリットの「時・死」に由来する。バタラ・グル(シヴァ)が海の上で欲望に駆られ妻に拒まれて海に落ちた精から生まれた巨人。一人っ子や双子などの「不運な生まれ」の者を食べる許しを得ており、これを祓うためワヤンでその物語を上演する儀礼ルワタンが行われる。
解説
概要
バタラ・カラは、ジャワとバリの伝承における時と死の神で、名はサンスクリット語で「時」「死」を意味する「カーラ」に由来する。神々の王バタラ・グル(ジャワにおけるシヴァ)の、望まれずに生まれた子であり、「不運な生まれ」の者を食べることを許された巨人とされる。その害から身を守るため、影絵芝居ワヤンでその物語を演じるルワタンと呼ばれる儀礼が、今日もジャワで行われている。
なお本サイトの分類では、東南アジアの神話を主たる体系とし、ヒンドゥーを併記する。
海に落ちた精から
神々の王バタラ・グルは、妻ウマ(パールヴァティー)とともに牛に乗って海の上を飛んでいたとき、欲望にかられた。妻はその場で交わることを拒み、バタラ・グルの精は海に落ちた。その精から、巨大な怪物が生まれた。これがバタラ・カラである。怪物は父を探して天へ上り、神々を脅かしたが、バタラ・グルはこれを我が子と認めた。欲望のあやまちから生まれた、望まれない子であった。
食べてよいとされた者
食べ物を求めるバタラ・カラに、父は特定の人間を食べることを許した。それは「不運な生まれ」(スケルタ)とされる者たちで、一人っ子、五人兄弟、男女の双子などがこれにあたる。こうした生まれの子は、バタラ・カラに狙われると考えられた。
ワヤンで祓う
バタラ・カラに狙われる者を守るため、ルワタンと呼ばれる祓いの儀礼が行われる。その中心は、影絵芝居ワヤンでバタラ・カラの物語を演じることである。神話を演じること自体が、祓いとして働くのである。語り手であり人形遣いでもあるダランが、この儀礼の祭司の役を担う。
門の上の顔
ジャワやバリの寺院の門の上には、しばしば巨大な顔が刻まれている。これもカーラと呼ばれ、入ってくる者を見下ろして悪しきものを退ける。インドの寺院に見られる「栄光の顔」キールティムカと同じ意匠である。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、バタラ・カラのワヤン人形(トロペン博物館蔵)である。
関わる神格・伝承
バタラ・グル(シヴァ)の子である。
文化的足跡
ルワタンの儀礼は、今日もジャワで行われている。
なお東南アジアの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。