アマロク
アマロク · Amarok · Amaroq
イヌイトの伝承の巨大な狼で、夜に一人で狩りをする者を襲って食う。群れではなく一頭で狩る。迫害された少年と格闘して力を授けたという話もあり、試練の与え手でもある。
解説
概要
アマロク(アマロクとも)は、イヌイトの宗教における巨大な狼で、夜に一人で狩りをする愚かな者を襲って食うとされる。群れで狩る狼と異なり、アマロクは一頭で狩る。
19世紀にデンマークの地質学者でグリーンランド研究者のヒンリク・リンクは、グリーンランドのイヌイトがアマロクの語をこの伝説の狼だけに用い、他の北極圏の民族は狼一般を指すのに用いると報告した。
伝承
リンク『エスキモーの物語と伝承』は、アマロクの現れる民話をいくつか伝える。
一つの話では、迫害され身体の小さい少年が力を増そうと願う。力の主に呼びかけると、アマロクが現れ、尾で少年を組み伏せた。これによって少年の身体から小さな骨がいくつも落ちる。アマロクは、その骨が成長を妨げていたと告げ、力を得るために毎日戻ってくるよう命じた。数日アマロクと格闘したのち、少年は三頭の大熊を倒せるほど強くなり、共同体の尊敬を得た。
別の話では、狩りで得た獲物をアマロクに奪われた男が、獲物を分け合うことを学ぶ。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
この存在を規定するのは、単独性である。群れで狩る狼の反対に、一頭で狩る。そして一人で狩る人間を襲う。単独で行動することの危険を、単独で行動する獣が体現している。北極圏の狩猟において、単独行動は死に直結する。
同時に、力を授ける者でもある。少年の物語では、アマロクとの格闘が成長の手段になる。恐ろしいものが試練の与え手として働く。
関わる伝承
イヌイトの狼の霊。セドナが海の動物の女主であるのに対し、アマロクは陸の捕食者の頂点にあたる。
文化的足跡
アマロクの名は、北極圏の地名、企業名、製品名に広く用いられている。グリーンランドの狼の学名にもこの語が含まれる。
なおイヌイトの伝統は、キリスト教化を経つつも今日まで継承されている。