アクルト
アクルト · Akhlut
アラスカのユピクの伝承に現れるシャチに似た合成の獣で、陸に上がると狼の姿をとり、再び海に戻ってシャチになる。1900年に博物学者ネルソンが記録した。海から陸へ、陸から海へ続く足跡がその存在の証とされた。
解説
概要
アクルトは、北米先住民のうち、アラスカのユピクの人々の伝承に語られる、シャチに似た獣である。陸に上がると狼の姿をとり、陸をさまよったのち再び海に戻ってシャチになるという。1900年、アメリカの博物学者エドワード・ウィリアム・ネルソンが、ほかの多くの獣の伝承とともに書き留めた。海辺まで続いて途切れる狼の足跡が、この変身の証とされた。
信仰
ネルソンの記録によれば、アクルトはシャチに似た形をしており、思いのままに狼に姿を変えることができる。陸をさまよったのち、海へ戻って再び鯨の仲間の姿になるという。人々はこの変身が本当に起こることを知っていると語った。狼の足跡が海辺まで続き、そこで消えているのを見たことがあるからである。海から上がって陸へ向かう足跡も見られるとされた。
シャチと狼は、ともに群れで狩る大きな捕食者である。太平洋の北西岸に住むトリンギットなどの人々にも、狼とシャチが姿を変え合う伝承がある。
ネルソンは、スミソニアン協会のために、1877年から81年にかけてアラスカのノートン湾の周辺でユピクの人々のあいだに滞在した。1900年に刊行された報告書『ベーリング海峡のエスキモー』は、この地域の暮らしの道具と伝承を知るための基本的な資料であり、多くの合成の獣の伝承が記録されている。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
系譜と関係
巨大な狼アマロクとともに、北極圏の狼の伝承をなす。
なおユピクをはじめ北極圏の先住民の伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。物語は地域と集団によって大きく異なる。