アイ・アパエック
アイアパエク · 皺の顔 · 首切りの神
モチェの主神と推定される牙のある皺の顔の存在。月の神殿の壁画に蛇の帯を締め断首の刃と首を持つ姿で描かれる。名は植民地期の借用で、単一の神であったかも確定していない。
解説
概要
アイ・アパエック(植民地期モチカ語 aiapæc、「創造者」)、あるいは「皺の顔」「蛇の帯の人物」「山の神」は、モチェの図像に同定される神話上の登場者で、おそらくモチェの主神である。一部の考古学者によれば、あらゆる懲罰の神のうち最も恐れられ崇められたもので、創造神、モチェの守護者、水と食物と軍事的勝利の与え手として崇拝された。
なおモチェ文化はインカに一千年ほど先立つペルー北岸の文化であり、本サイトではアンデス神話としてインカの体系に含めて扱う。
図像と解釈
このような図像上の登場者の存在を最初に提唱したのは、考古学者ラファエル・ラルコ・オイレである。現代の分析は、それが単一の神であったかを疑問視し、複数の神話上の登場者を見出している。さらに、アイ・アパエックという名は時代錯誤で、植民地期のスペイン人文法家がキリスト教の神に最初に用いたものである。
最も一般的な表現は、月の神殿(ワカ・デ・ラ・ルナ)の壁画に見られるもので、牙を持ち、皺のある顔で、蛇の帯を締め、両手に断首の刃と切り落とした首を持つ。
牙のある口は、チャビンの図像から受け継がれた要素である。皺は老いを、蛇の帯は大地との結びつきを示すと解される。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、月の神殿の修復された壁画の一部である。
この存在を規定するのは、名と実体の乖離である。名は植民地期の借用であり、単一の神であったかどうかも分からない。しかしモチェの神殿の壁面を埋め尽くす牙のある顔が、この文化の宗教の中心にあったことは確かである。
断首の主題も重要である。モチェの図像には、捕虜の儀礼的な殺害が繰り返し描かれる。「首切りの神」としての相が、この人物に帰される。
関わる神格・伝承
モチェの図像には、他にも月の女神、海の神、蛸の神などが同定されている。アイ・アパエックとの関係は不明である。
杖の神と同じく、考古学上の便宜的な同定であり、当時の呼称は伝わらない。
文化的足跡
月の神殿(トルヒーヨ近郊)は1990年代以降の発掘で壁画が明らかになり、ペルー北部の主要な考古遺跡として公開されている。
なおアンデスとアマゾンの先住民の伝統は今日も継承されている生きた信仰である。