アビク
アビク · アビクー · Abiku
幼くして死ぬ子の霊を指すヨルバ語で、「生まれて死ぬために」を意味する。同じ霊が同じ母のもとへ何度も戻り、そのたびに死ぬとされた。遺体に印をつけ、次の子の痣で見分け、醜い名や足環で引き止めようとした。イグボのオグバンジェと同じ観念。
解説
概要
アビクは、ヨルバの人々のあいだで、幼くして死ぬことを繰り返す子の霊を指す言葉である。「生まれたもの」と「死」を合わせた語で、「死ぬために生まれてくる者」と訳しうる。同じ霊が同じ母のもとに何度も生まれ、そのたびに幼いまま死んでいくと考えられた。
なお本サイトの分類では、アフリカの体系に含めて扱う。
繰り返される死
死んだ子の霊は、また同じ母のもとへ生まれ、そしてまた幼くして死ぬ。これが何度も繰り返されるとされた。乳児の死亡率が高かった時代、何人もの子を相次いで失う母の経験が、一つの霊が行き来しているのだという形で理解されたのである。
見分け、引き止める
人々は、死んだ子の遺体に切り傷や焼き印をつけることがあった。次に生まれた子の同じ場所に痣があれば、同じ霊が戻ってきたしるしとされた。そうした子には、「コクモ(もう死なない)」や「ドゥロジャイエ(留まって世を楽しめ)」のように、霊に留まるよう願う名をつけた。重い鉄の環を足にはめ、霊が走り去るのを防ごうとすることもあった。印をつけ、名を与え、足を留めるという一連の実践はいずれも、繰り返しを断ち切ろうとする試みである。
隣接するイグボの人々も、同じ観念を「オグバンジェ」の名で持ち、霊が生まれる前に埋めたとされる石(イイ・ウワ)を掘り出して繰り返しを断つ実践が伝えられている。
文学のなかのアビク
アビクは現代アフリカ文学の重要な主題でもある。ノーベル賞作家ウォーレ・ショインカは詩「アビク」を書き、ベン・オクリの『満たされぬ道』(1991年、ブッカー賞)の語り手アザロはアビクの子である。生と死のあいだを行き来する者の視点が、植民地支配から独立へと移り変わる社会を見つめる語りとして用いられている。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
関わる伝承
イグボのオグバンジェと同じ観念であり、イベジの双子信仰と同じく出生をめぐる観念に属する。
文化的足跡
アビクの観念は、今日のナイジェリア文学で最も頻繁に取り上げられる伝統的な主題の一つである。
なおこれらの宗教は今日も信仰されている生きた伝統であり、本項の記述はその神格の伝承と図像に関する学術的な整理である。