シラプ・イヌア
シラプ・イヌア · シラ · シッラ
イヌイトの宗教で「息」「霊」を意味するシラの主。存在するすべてのものの根源をなし、空・風・天候をつかさどる。男性とされるが形を持たず描かれることがなく、物語にもほとんど現れない。人類学者は最も古い神格の一つとみる。
解説
概要
シラプ・イヌア(「シラの主」)、あるいはシラ(「息」「霊」)は、イヌイトの宗教で、存在するすべてのものの根源をなす要素であり、生命の息、あらゆる動きと変化のもととされる。人の生に起こるすべてを統べると信じられた。空と風と天候の霊である。北米先住民の神話の体系に含めて扱う。
信仰
シラは男性とされるが、描かれることはなく、形を持たないと考えられている。性格らしい性格を持たないとされるため、シラが登場する神話はごく少ない。魂を作る素材もシラだと信じられた。キリスト教の宣教師は白熊の霊ナヌークをイヌイトの至高神とみなしたが、その役割にずっと近いのはシラである。一方でシラには悪意ある面もあり、遊んでいる子どもをツンドラへ誘い出し、二度と戻さないとも言われる。
この語は、イヌイトのあいだでシラプ・イヌア、ヒラプ・イヌア、イヌピアックのあいだでシラム・イニュア、ユピックのあいだでエッラム・ユアなどと呼ばれ、多くの場合「外の空間」「知性」「天候」「空」「宇宙」を意味する。カッパー・イヌイトのあいだでは、シャーマンはこの「風に宿るもの」から力を得るとされ、その助けの霊もシラプ・イヌエと呼ばれた。シベリアのユピックのあいだでは、地上の人と同じように獲物を狩る強い狩人として描かれ、人々が慣習と伝統に従うかどうかを見張るとされた。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
系譜と関係
人類学者の解釈では、シラはイヌイトの神々のうちで最も古いものの一つで、広く分布していることがその古さを示すとされる。この千年ほどのあいだに、海獣が主な食料になるとともに海獣の女神セドナに、カリブーがそうなるとともにカリブーの母に、その位置を譲ったと考えられている。
文化的足跡
カイパーベルト天体(79360)シラは、この霊にちなんで名づけられた。
なおイヌイトの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。物語は地域と集団によって大きく異なる。