ピー・ポープ
ピー・ポープ · ポープ · Phi Pop
タイの民間伝承の人食いの霊で、人に取り憑いて内臓を食べる。呪文で体を入れ替えられて戻れなくなった従者の霊に由来するとされ、女の呪術師の体に住み唾によって受け継がれるという。血筋で伝わるもの、他人に化けるものなどに分けられる。
解説
概要
ピー・ポープ(ポープ)は、タイの民間伝承に語られる人食いの霊で、人の内臓を食べることを好む。霊ピー・ファーと関わりがあるとされる。東南アジアの神話の体系に含めて扱う。
神話・物語
古い伝説によれば、昔、ある王子が呪文を唱えて動物の体に入り込んだ。それを聞いた従者が同じ呪文を唱えて王子の体に入り込み、王子になりすました。王子は鳥の体に入って妻に真実を告げに急ぎ、妻は従者の本来の体を壊させた。王子が偽の王子に動物の体に入ってみよと挑むと、従者は愚かにも動物の体に入り、その隙に本物の王子は自分の体に戻った。体を壊された従者は戻ることができず、以来、その霊は体から体へと移り、腸を食べるようになったという。
信仰
村の言い伝えでは、この霊は女の呪術師の体に住み、呪術師が眠るとその体を抜け出す。呪術師が死ぬ前に、霊は次の宿主を見つけなければならず、新しい宿主は老いた呪術師の唾を口にすることでポープを受け継ぐ。取り憑かれた人は、眠っているあいだに腸を食べられるという。追い払うには、癒しの踊り手を呼び、回る踊りを見せるとよいとされる。患者が踊りを見ていると、ポープは回転のなかに入り込み、体から追い出されるのである。
タイの民間伝承では、ポープは主に三つに分けられる。取り憑かれた人とポープが一体となり、宿主が死ねばポープも死ぬ「ふつうのポープ」(ポープ・タンマダー)、親から子へ血筋のように受け継がれる「血筋のポープ」(ポープ・チュア)、問いただされても本当の主を明かさず、無実の人に罪を着せ、他人の姿に化ける「顔を替えるポープ」(ポープ・レーク・ナー)である。すべてのポープの主とされるハー・コームは、日の光を恐れず、人や動物に化けて昼間も人のあいだにまぎれ、聖なる物も僧もお守りも効かず、それと同等以上の霊力を持つ呪術師(モー・ピー)だけが抑えられるという。イーサーンでは、ポープは黒い犬など、さまざまな動物の姿をとるとも信じられている。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
系譜と関係
ピー・ファーと関わりがあるとされる。同じく内臓を狙うクラスーとともに、タイの霊の系列をなす。
文化的足跡
ポープについての最も早い文学上の言及の一つは、スントーン・プーが1842年から1843年ごろに書いた詩『ラムパン・ピラープ』に見られる。
なお東南アジアの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。