オイジュス
オイジュス · オイジス · ミセリア
苦痛と悲惨の擬人化で、ニュクスが父なくして生んだ子の一柱。固有の神話を持たず、『神統記』の系譜のなかで名が挙げられるのみである。ローマではミセリアと呼ばれた。
解説
概要
ギリシア神話において、オイジュス(Oizys、「悲惨」の意)は、苦痛あるいは苦悩の擬人化である。
ヘーシオドス『神統記』において、オイジュスはニュクス(夜)が父の助けなく生んだ子の一人である。オイジュス自身に固有の神話はない。
ローマの著者キケローとヒュギーヌスによれば、「ミセリア」(悲惨)はノクス(夜、ニュクスのローマの対応者)とエレボスの子の一人である。
ニュクスの子ら
『神統記』第211行以下は、ニュクスが単独で生んだ子らを列挙する。モロス(定業)、ケール(死の運命)、タナトス(死)、ヒュプノス(眠り)、夢の一族、モーモス(非難)、オイジュス(悲惨)、ヘスペリデス、モイライ(運命)、ケーレス、ネメシス(応報)、アパテー(欺き)、ピロテース(愛欲)、ゲーラス(老い)、エリス(不和)である。
夜が父なくして生むという設定は、これらが本来的に暗く忌むべきものであることを示す。父——秩序を与える者——を持たないゆえに、統御されない。
オイジュスはそのなかでも最も影の薄い一柱であり、名が挙げられるのみである。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。
物語を持たない擬人神という点が、この神格を規定する。ギリシアの擬人神には二種類ある。物語を持つもの(エリス——黄金の林檎を投げた)と、名のみのもの(オイジュス、モロス、ピロテース)である。
後者は、ヘーシオドスの系譜のなかで概念を整理するために置かれた。神格というより、世界の構成要素の目録である。
関わる神格・伝承
母はニュクス。ゲーラス、モロス、アパテーらと兄弟。ローマではミセリア。
文化的足跡
日本語圏でこの名が挙げられることはまずない。ニュクスの子らの列挙において名が現れる程度である。