メー・ナーク
メー・ナーク · ナーン・ナーク · メー・ナーク・プラカノーン
タイで最も有名な幽霊で、ラーマ4世の時代のプラカノーンの妻ナーク。夫の出征中に出産で子とともに死んだが、帰った夫のために霊となって家で待ち続け、床下の檸檬を拾おうと腕を長く伸ばすのを見られた。復讐でなく愛のために留まる霊であり、今日その祠で徴兵を免れる祈りが捧げられる。
解説
概要
メー・ナーク(「プラカノーンのナーク夫人」)は、タイで最もよく知られた幽霊である。19世紀のラーマ4世の時代、夫が兵役で家を離れているあいだに出産で命を落とした妻ナークが、戻ってくる夫のために霊となって家で待ち続けたと語られる。恐ろしい幽霊でありながら、夫を想い続けた妻の愛の物語として親しまれ、今日もその祠には多くの人々が参っている。
なお本サイトの分類では、東南アジアの神話の体系に含めて扱う。
待ち続けた妻
プラカノーンは、今日のバンコク東部にあった運河沿いの村である。夫のマークが兵役のため家を離れたとき、妻のナークは身ごもっていた。夫の留守のあいだに、ナークは出産で子とともに命を落とした。戦から戻った夫は何も知らず、家で待っていた妻と子と暮らしはじめる。真相を告げようとした村人たちは、ナークの霊に殺されてしまった。
ある日、ナークは床下に落ちたレモンを拾おうとして、腕を長く伸ばした。それを見た夫は、妻がすでにこの世の者でないことを悟り、寺へ逃げ込んだ。ナークの霊は高僧によって鎮められ、額の骨に封じられて運河に沈められたと伝えられる。
復讐でなく愛のために
出産で亡くなった女性が霊になるという点で、メー・ナークはインドネシアやマレーのクンティラナックと同じ型に属する。けれどもナークがこの世に留まったのは、復讐のためではなく、愛する夫のそばにいるためであった。恐怖の物語であると同時に、死んでもなお家族のもとに留まろうとした妻の愛の物語として語り継がれてきた。
祠への祈り
バンコクのワット・マハーブットには、ナークの祠がある。今日も多くの人々が訪れて願いをかけるが、とりわけ徴兵の抽選で兵役を免れるよう祈る人が多い。夫を兵役に取られた悲しみを知るナークにあやかってのことである。安産を祈る人も多い。恐れられた霊が、祈りを聞き届ける存在になっているのである。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ワット・マハーブットの祠に奉納された肖像である。
関わる伝承
クンティラナック、クラスーとともに、東南アジアの女の霊の系列に連なる。
文化的足跡
1936年以来、メー・ナークの物語は三十本を超える映画になった。ノンスィー・ニミブット監督の『ナンナーク』(1999年)は、タイ映画の国際的な評価を高めた作品として知られる。
なお東南アジアの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。
領分・別名
親・配偶者・子までを表示(全体はフル系図ページへ)。実線=主要伝承/点線=異伝・別系統。