ヘーロー
ヘーローとレアンドロス · Hero · Hērō
ヘレースポントスのセストスの塔に住むアプロディーテーの女神官。対岸アビュドスの青年レアンドロスが毎夜海峡を泳いで会いに来たが、嵐の夜に灯火が消えて溺れ死に、彼女も塔から身を投げた。ムーサイオスの小叙事詩で最もよく知られる。
解説
概要
ヘーロー(Ἡρώ)は、ギリシア神話の人物である。ヘレースポントス——現在のダーダネルス海峡——のヨーロッパ側セストスの塔に住むアプロディーテーの女神官で、対岸アビュドスの青年レアンドロスとの物語で知られる。
神話・物語
レアンドロスはヘーローに恋し、毎晩彼女に会うためにヘレースポントスを泳いで渡った。ヘーローは塔の最上階に灯火を掲げて恋人を導いた。
ムーサイオスによれば、ヘーローは、愛の女神アプロディーテーに仕える者が処女のままでいるのは女神の意にかなわない、というレアンドロスの説得に折れて、その愛を受け入れた。
この日課は暖かい夏のあいだ続いた。しかしある冬の嵐の夜、風が塔の灯火を吹き消し、方向を見失ったレアンドロスは波に呑まれて溺れ死んだ。翌朝、岸に流れ着いた遺体を見たヘーローは狂乱し、恋人の後を追って塔から海へ身を投げた。
この物語は、5世紀末の詩人ムーサイオスの小叙事詩『ヘーローとレアンドロス』によって最もよく知られる。オウィディウス『名婦の書簡』第18・19書簡も、二人の往復書簡の形でこれを扱う。
図像と象徴
本サイトが掲げるのは、ヤン・ファン・デン・フッケが1635年ごろに描いた、溺れたレアンドロスを嘆くヘーローの絵である。ルーベンス、ターナー、レイトンをはじめ、近世以降の絵画に数多くの作例がある。
系譜と関係
アプロディーテーの女神官。恋人はレアンドロス。舞台のヘレースポントスは、ヘレーが落ちて溺れたことからその名がついた海峡である。
文化的足跡
バイロンは1810年、レアンドロスに倣ってヘレースポントスを泳いで渡り、その体験を詩に書いた。物語の舞台を実地に再現した例として知られる。