ブルル
ブルル · ブ・ルル · ティナグタッグ
ルソン島北部のイフガオ人が稲を守るため家や米倉に置く、祖先を様式化した木彫りの像で、多くは男女一対。祭司の儀礼によって力が宿るとされ、田植えの時期には鶏や豚の血に浸した手で触れる。今日では多くが観光向けに作られる。
解説
概要
ブルル(トゥナグタッグとも)は、フィリピンのルソン島北部に住むイフガオの人々(とその支族カランガヤの人々)が、稲を守るために用いる木彫りの像である。祖先を高度に様式化した姿で、祖先の霊が宿ることで力と富を得ると考えられた。東南アジアの神話の体系のうち、イフガオの稲の祭祀に属する。
信仰
ブルルは、稲作や病の治癒にかかわる儀礼に用いられる。作るときには、祭司がアルウェン・ブルルと呼ばれる儀礼を行い、像に力が宿るようにする。像は米とともに家や米倉に置かれ、稲を守り、増やして、豊かな収穫をもたらすとされた。粗末に扱えば、祖先の霊が病をもたらすと恐れられた。
田植えの時期には、トゥノドと呼ばれる儀礼で、鶏や豚の血に浸した手で像に触れる。年月とともに血が像を黒く染め、その上に供物の脂の艶が重なる。ブルルは家の長子に受け継がれた。
図像と象徴
男女一対で作られることが多く、女の像には臼、男の像には杵といった性にかかわるしるしが添えられる。男は褌、女は巻きスカートや耳飾り、足輪をつけて表されることもある。膝を立てて地に坐り、腕を膝の上で組んだ姿が典型である。ナラやイピルの木から彫られる。主画像は、ルーヴル美術館が所蔵するイフガオのブルル(15世紀とされる)である。
系譜と関係
タガログのララウアンとリカは、ブルルに相当するものとされる。
文化的足跡
今日のブルルの多くは観光客向けに作られている。かつて祭司であったイフガオの人は、伝統的な儀礼が最後に行われたのは1960年代であったと述べている。レイ・パス・コントレラスのように、ブルルを彫って欧米で作品が展示され売られる作家も現れた。
なお東南アジアの伝統は今日も継承されている生きた文化であり、本項の記述はその伝承に関する学術的な整理である。