ケルコープス
ケルコーペス · ケルコプス · Cercopes
猿のような顔と尻尾を持つ二人の山賊兄弟。眠るヘーラクレースを襲って逆に捕まり、逆さ吊りにされたが、英雄の「黒い尻」を笑って赦された。のちに猿に変えられた。
解説
概要
ケルコーペス(Κέρκωπες / Kerkopes、単数ケルコープス)は、尾をもつ猿のような姿の二人組の盗賊である。眠るヘーラクレースの武具を盗もうとして捕らえられ、天秤棒に逆さ吊りにされて運ばれたが、英雄の尻を見て笑い出し、その冗談でヘーラクレースを笑わせて許されたという。
神話・物語
二人はオーケアノスの娘テイアーの子とされ、名はアクモーンとパッサロス、あるいはエウリュバテースとプリュノーンダースなど、資料によって異なる。母は、「黒い尻の男(メランピュゴス)に気をつけよ」と二人に警告していた。
ヘーラクレースがリューディアの女王オムパレーに仕えていたころ、二人は道端で眠る英雄に近づいて武具を盗もうとした。目を覚ましたヘーラクレースは二人を捕まえ、足を縛って天秤棒の両端に逆さに吊るし、肩に担いで歩いた。逆さの二人の目の前には、日に焼けて毛深い英雄の尻があった。「あれが母の言っていた黒い尻だ」と二人が笑いだすと、わけを聞いたヘーラクレースも笑い、二人を放してやったという。
のちに二人はゼウスをも欺こうとしたため、猿に変えられたとも、石にされたともいう。イタリアのイスキア島の古い名ピテークーサイ(猿の島)は、この猿にちなむと説明された。
図像と象徴
逆さ吊りの二人を天秤棒で担ぐヘーラクレースの図は、シケリアのセリヌースのC神殿のメトープ(前6世紀)をはじめ、アルカイック期の壺絵や浮彫に多く残る。英雄の物語のなかで数少ない滑稽な場面として好まれた。本サイトの主画像は、獅子の皮をまとったヘーラクレースが、二人を逆さに縛りつけた棒を肩に担ぐアッティカの黒像式アンフォラ(前530〜500年頃)である。
系譜と関係
母はテイアー(オーケアノスの娘)。捕らえたのはヘーラクレース。
文化的足跡
「ケルコープス」は「尾のある者」を意味し、古代の喜劇やことわざでずる賢い者を指す呼び名にもなった。ヘーロドトス(7.216)は、テルモピュライ近くに「ケルコーペスの座」と呼ばれる岩があったと記す。