ケルコープス
ケルコーペス · ケルコプス · Cercopes
猿のような顔と尻尾を持つ二人の山賊兄弟。眠るヘーラクレースを襲って逆に捕まり、逆さ吊りにされたが、英雄の「黒い尻」を笑って赦された。のちに猿に変えられた。
解説
概要
ケルコープス(Κέρκωψ、複数形ケルコーペス)は、ギリシア神話に登場する二人の山賊兄弟である。
オーケアノスの娘テイアーの子で、エペソスの近く、あるいはテッサリアに住む。力の強い巨漢——または小人——で、猿のような顔をしていた。名は「尾の付いた者」を意味し、尻尾があった。二人の名はエウリュバテースとプリューノーンダース、あるいはシロス(「すが目」)とトリバロス(「やくざ者」)とされる。
神話・物語
通行人を殺しては盗みを働いていたが、ある日、道端で眠っていたヘーラクレースを襲って逆に捕まり、棒の両端に逆さ吊りにされた。
ヘーラクレースがその棒を担いで歩くと、二人は英雄の尻が毛で真っ黒になっているのを見て、かつて母から「メランピュゴス(黒い尻)に気をつけよ」と言われたことを思い出し、笑い出した。その笑いにヘーラクレースも笑い、二人を解放したという。
のちに二人はゼウスを欺こうとし、猿に変えられた。あるいは石にされたともいう。ピテークーサイ(「猿の島」、現在のイスキア島)の名は、この猿に由来するとされる。
図像と象徴
固有の図像は伝わらず、本サイトも主画像を掲げない。ただし棒に逆さ吊りにされた二人を担ぐヘーラクレースの図は、セリヌスの神殿メトープ(前6世紀)をはじめ古代の作例に多い。
ヘーラクレースの物語のうち、笑いで終わる数少ない挿話である。悪人が退治されるのではなく、笑いによって赦される。「黒い尻」という下品な冗談が、英雄の怒りを解く。
猿に変えられるという結末も、この兄弟の性格に対応する。猿のような顔、尻尾、盗み、そして最後に猿そのものになる。
関わる神格・伝承
母はテイアー。ヘーラクレースに捕らえられ、ゼウスによって猿に変えられた。
文化的足跡
日本語圏でこの名が挙げられることはまずない。しかし逆さ吊りの二人を担ぐヘーラクレースの図像は、古代美術において広く分布しており、滑稽な主題として好まれた。