ミンダナオ島ラナオ湖周辺のマラナオ人に伝わる叙事詩。十七の章からなり、七万二千行に及ぶ。各章はそれぞれ独立した物語をなし、最もよく知られるのは英雄バントゥガンの武勲である。
伝説上の王国ボンバランを舞台に、王族の英雄たちの戦い、恋、婚礼が歌われる。バントゥガンは不死身の勇者として描かれ、一度死んでも天に昇った魂が取り戻されて蘇るという挿話を持つ。
マラナオはイスラーム教徒の民族であるが、ダランゲンの世界はイスラーム以前の要素を多く保っており、天界や精霊、伝説の鳥サリマノクに通じる象徴が現れる。
伝統的には婚礼などの祝いの席で、専門の歌い手によって数夜にわたって歌われた。今日では歌い手の減少により継承が危ぶまれている。2002年にフィリピンの国家文化財に指定され、2005年にユネスコの無形文化遺産に登録された(「ラナオ湖のマラナオ人のダランゲン叙事詩」)。